“ホッ”とspot
印象に残った肺塞栓症の一例
田中 里香
1
1太田記念病院内科
pp.607
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904230
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症例は43歳の女性.職業はデパートのアナウンス係で,座位でいることが多い.昭和61年に子宮筋腫を指摘され,貧血と下腿浮腫のため近医で鉄剤と利尿剤を投与されていた.平成2年6月19日夜,布団を敷こうとして突然胸の重苦しい感じを自覚.そのまま就寝し,翌日自転車で会社へ行く途中,眼前暗黒感,次いで意識消失発作が出現した.救急車到着後意識は回復したが,その後軽労作で動悸,呼吸困難が出現するため,翌21日,当院外来を受診した.
来院時,血圧120/80mmHg,脈拍120/分,体温37.1℃,眼球結膜貧血様,心雑音はなく心音のII p亢進,II音分裂を認めた.肺野は清,両下腿に浮腫,右大腿と下腿に静脈瘤を認めた.検査所見はHb 8.8g/dl(小球性低色素性貧血),Fe 15mg/dlと鉄欠乏性貧血の所見以外は生化学データもすべて正常.動脈血ガス分析では,PaCO2 24torr,PaO2 45.3torrと著明な低酸素血症を認め,胸部X線では左第2弓突出,両上肺野の透過度亢進,心電図では不完全右脚ブロック,右側胸部誘導でのT波陰転など,右心負荷所見を認めた.
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