増刊号 Common Disease 200の治療戦略
内分泌疾患
ADH分泌異常症
大磯 ユタカ
1
1名古屋大学医学部第1内科
pp.412-413
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904142
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疾患概念と病態
ADH(抗利尿ホルモン)分泌異常症(syndromeof inappropriate secretion of ADH:SIADH)は抗利尿ホルモンであるバゾプレシンの絶対的,相対的過機能状態を背景に生じる希釈性低Na血症である.急速に低Na血症を発生した場合を除き,SIADHの症候学的な特徴は乏しく,偶然行った血清電解質検査で発見する場合が多い.その診断は,①低浸透圧血症を伴う低Na血症の存在(高脂血症,高蛋白血症などによる見かけ上の低Na血症を除外),②尿中Na排泄が20mEq/日以上あり,尿が最大希釈されていないこと(尿浸透圧が100mOsm/kg以上を示す),③除外項目の確認(腹水を伴う肝硬変,心不全,低張性脱水,甲状腺機能低下症,副腎皮質機能低下症,利尿剤の過剰使用などを除外)に基づく.病因は異所性バゾプレシン産生腫瘍による自律的分泌によるもの,あるいは中枢神経系および肺に生じる多くの疾患を背景とするバゾプレシン分泌調節系の異常によるもの,さらに薬剤誘発群の3群に大別される.バゾプレシンの水貯留作用の不適切な亢進により,希釈性の低Na血症が発生することがSIADHの病態の第一ステップであり,その後,循環血漿量の増加による腎血行動態の変化,レニン・アルドステロン系の抑制,心房性Na利尿ペプチドの分泌増加などの要因により,低Na血症にもかかわらず尿中へのNa排泄が続き,低Na血症が固定化する.
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