“ホッ”とspot
“たいしたことのない”腹痛(その1)
高橋 将
1
1済生会宇都宮病院内科
pp.351
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904116
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34歳の男性が上腹部痛を主訴に救急室を受診した.問診上“とりたてたこと”はなく,腹部の理学的所見も“たいしたこと”はなかった.患者には胃の痛みだろうと告げた.少し休んでいきたいというので奥のベッドを指示し,それきり患者には注意を払わなかった.その夜の救急室は昼間の外来さながらに混雑しており,その対応に追われていた.ただ,患者がたびたび腹を抱えて部屋を出るのを不信に思った.トイレにでも行って吐いているのかな.それにしても,吐くとはいっていなかったはずだが……(後で聞いたところによると,水を飲みに行ったとのことだった.水を!飲みに!しかも何度も!).
救急の診察室に並べられたカルテが一段落したところで,奥のベッドに様子を伺いに行った.「どうですか.帰れますか」.来院してから1時間が経っていた.「いや帰れない」という.腹部はやはり“たいしたこと”はない.しかし,患者の顔はどうも苦悶状である.はっと思い立って心電図をとって驚いた.前胸部でT波がテント状に高い.医者の顔色が変わった.急性心筋梗塞?!超急性期?!
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