“ホッ”とspot
Wegener肉芽腫症との出会い
多田 利彦
1
1済生会山口総合病院内科
pp.304
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904092
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ある日,外来に65歳の痩せた顔色の悪い男性が診察にこられた.話を聞くと,“半年前から体がだるくなり,食欲もない.仕事が忙しかったので,病院にもこれなかった.1週間前より声が出なくなり,食事もほとんどとれなくなったため病院にきた”と,かすれた声で答えた.あまりにも憔悴した表情であったため,耳鼻科に嗄声の検査を依頼し,とりあえず入院していただくことにした.耳鼻科からは,“声帯下喉頭に腫瘍があり,喉頭癌疑い”との返事があった.胸部X線写真では,右上肺に4cm大の腫瘤が見られ,左上肺にも2cm大の腫瘤が数個認められた.そのとき,直感的に喉頭癌,肺癌あるいはその転移と考えた.しかし,喉頭部からの生検標本からも肺からも,癌細胞は全く検出されなかった.喉頭鏡の写真,病理所見,胸部X線写真,慢性炎症を示す検査所見や,患者さんの痩せた顔などが雑然と脈絡もなく頭の中に残り,診断のつかないまま幾日かが過ぎた.そのうちに,肺の腫瘤はみるみる大きくなり,中には空洞が生じ始めた.
診断のつかない“あせり”を感じながら,病室に向かっているとき,たまたま耳鼻科の医師と廊下で出会った.
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