増刊号 Common Disease 200の治療戦略
循環器疾患
心臓神経症
中野 弘一
1
,
今崎 牧生
1
,
平 陽一
2
1東邦大学医学部心身医学
2国際親善病院心療内科
pp.86-87
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903994
- 有料閲覧
- 文献概要
疾患概念と病態
心臓神経症とは,動悸・息切れ・胸痛・胸部不快感などの循環器症状を主とする神経症と定義される.臨床の場では明らかな器質的心臓・脈管疾患を認めないが,心臓・脈管症状を主訴とし,心理的要素の関与しているものと考えられている.しかし,器質的障害は存在するが,症状は当該疾患に伴うものでないと判断される場合も心臓神経症と診断しうる.心理的には不安症状を主とするものが大部分であるが,恐怖・強迫・心気・ヒステリー症状を主とするものもある.歴史的にはirritable heart,effort syndrome,Da Costa syndrome,神経循環無力症など種々の呼称があるが,心臓神経症とほぼ同様な病態を持つ概念と考えられる.精神医学では不安神経症で包括できる病態であるとされている.臨床的推移から分類すると,急性型(パニック障害)と慢性型(全般性不安障害や身体化障害など)に分けられる.
心臓神経症の病態については,中枢のメカニズムでは,脳幹にある青斑核の興奮によって不安が惹起され,動悸などの急性発作としての不安症状が生じるとする考え方が有力である.一方,末梢では,β遮断薬が奏効することなどから,β受容体の過敏性を介して動悸などの交感神経刺激症状が出現するとする考え方があり,現在では両者が影響し合って発症すると考えられている.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.