臨床医に必要な老人をみる眼・11
ストーマ造設老人
片山 隆市
1
,
大塚 正彦
1
,
穴沢 貞夫
1
1東京慈恵会医科大学第1外科
pp.2670-2673
発行日 1994年12月10日
Published Date 1994/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903442
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便の排泄経路を変えるために手術により腹腔外に引き出された腸管のことはこれまで人工肛門と呼ばれてきたが,最近ではより広い概念を示す単語としてストーマという名称が普及しつつある.ストーマは消化器ストーマ(狭義の人工肛門)と尿路ストーマ(尿管皮膚瘻,回腸導管など)に大別される(図1).ストーマ造設は排泄の状態が著しく変化することを意味し,その管理の良否は患者のquality of life(QOL)に大いに影響する.
現在,わが国で消化器ストーマ造設術を受ける患者は年間1万人以上と推定され,日常診療でもオストメイト(ストーマ保持者)に接する機会が増加しでいる.1984年から1993年の10年間に,東京慈恵会医科大学第1外科においてストーマ造設術を施行した256症例について,その原因疾患を表1に示したが,その約80%が大腸癌であり,炎症性腸疾患,結腸憩室疾患および大腸癌以外の悪性腫瘍がこれに次いでいる.図2には造設年齢を示したが,平均は60.6歳で,60歳以上が全体の53.5%を占めている.すなわちオストメイトの大多数は原因疾患としての悪性腫瘍の治療を受け,また新たな経験であるストーマケアを高齢になってから開始しなければならない場合が多いことがわかる.
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