今月の主題 胸部X線からの肺疾患の診断と治療
びまん性肺病変
カリニ肺炎
味澤 篤
1
1東京都立駒込病院・感染症科
pp.1419-1421
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402901634
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カリニ肺炎(Pneumocystis carinii pneumonia,以下PCPと略す)は従来血液疾患患者などの免疫不全患者に時にみられる日和見感染症であった.しかし,現在ではこれらの患者に対し予めST合剤による予防投与を行っている結果,その頻度はより少なくなっている.むしろPCPはヒト免疫不全ウイルス(以下HIVと略す)感染症の終末像である後天性免疫不全症候群(以下AIDSと略す)の主たる日和見感染症として頻度が増加しつつある.HIV感染者であっても,医療機関できちんとした経過観察を受けている患者はT4リンパ球数が200個/mm3以下となるとPCPに対する予防投与を受ける.その結果,血液疾患患者などと同様にPCPの発症率は減少する.またジドブジン(zidobudine,レトロビル®,以下AZTと略す)の投与も受けているのでAIDSへの進展も緩徐となり,無症候(キャリア)の時期が延長する1).しかし,HIVに感染しているにもかかわらず,本人が知らない,あるいは知っていても,医療機関で経過観察を受けていない感染者は,自覚症状のないまま次第に免疫力が低下し,AIDSの主要疾患であるPCPを発症することが多い.その典型的な1例をとりあげ,HIV感染に伴うPCPについて概説する.
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