今月の主題 大腸疾患診療の新時代
よくある大腸疾患:日常診療の視点から
よくある下痢の診断と治療
森下 鉄夫
1,2
,
武藤 章弘
1,2
,
長濱 貴彦
1,2
,
森木 隆典
1,2
,
澤口 健太郎
1,2
,
土屋 雅春
3
1静岡赤十字病院・第1内科
2静岡赤十字病院・消化器科
3慶応義塾大学医学部・内科
pp.1522-1525
発行日 1991年9月10日
Published Date 1991/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402901040
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ポイント
1)よくある下痢とは,一時的で3週間以内に治癒し,長期にわたり日常生活を侵害することのない,そして一生の内で何回も罹りうる下痢である.
2)下痢の病態は,浸透圧性,分泌性,粘膜障害性,濾過亢進性,運動異常性などの下痢の機序から考えると,理解は容易である.
3)炎症性腸疾患との鑑別が重要である.炎症性腸疾患は慢性の長期間にわたる下痢疾患であるが,潰瘍性大腸炎では粘血便・血便がほぼ必発で,X線,内視鏡検査で必ず有意の所見を呈する.クローン病は,若い成人で下痢とともに腹痛や体重減少が顕著で,肛門病変,小腸X線検査所見,肉芽腫などの病理組織学的所見が重要である.
4)治療の基本は,脱水を是正する補液と止痢である.補液は経口補液がまず試みられるべき方法であるが,止痢剤は感染性腸炎の症状をむしろ長期化・重症化させることがあり,注意を要する.
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