今月の主題 輸液療法の実際
各種病態における輸液療法の実際—私の処方
重症感染症の輸液療法
小野 聡
1
,
玉熊 正悦
1
1防衛医科大学校・第1外科
pp.1066-1068
発行日 1991年6月10日
Published Date 1991/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900931
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重症感染症,つまり感染の影響が全身に及んだsepsis患者の輸液は,水・電解質輸液による細胞外液補正→循環動態の安定化と,栄養管理の2つが主な目的である.感染極期には前者が中心となるが,ある程度急性期を脱して来ると当然のことながら,上記の2つの目的を満足した輸液が必要となる.この急性期の水分,電解質を中心とした輸液はおそらく前章のショックの項などで論じられるであろうため,ここでは重複を避け後者の栄養管理を中心に述べる.
重症感染症の生体では一般にエネルギー需要量が増加し,hypermetabolicな状態にあるといわれている.増加の程度はストレスの種類や大きさによって変わるが,正常時の40〜70%増と言われている.図1にエネルギー需要量の増加と尿素窒素排泄量の増加について侵襲別に比較したが,広範囲熱傷時で最も多く重症感染症時ではそれに次いでいる1).侵襲時のこのようなhypermetabolicな反応は,主にカテコールアミン,コルチゾール,グルカゴンなどのストレスホルモンの分泌増加によって引き起こされると考えられ,これらのホルモンはいずれも抗インスリン作用を有し,蛋白質の異化が亢進して窒素排泄量は著しく増加する傾向にある.
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