今月の主題 消化器薬の使い方—その効果と限界
肝疾患
肝性脳症の薬物療法
与芝 真
1
1昭和大学藤が丘病院・消化器内科
pp.674-675
発行日 1991年4月10日
Published Date 1991/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900829
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●肝性脳症を起こす基礎疾患
肝性脳症とは,種々の原因による肝機能障害に基づく中枢神経症状の総称である.神経症状は羽ばたき振戦や失見当識に始まる意識障害の他,逸脱行為や痴呆のような知能活動の低下,せん妄,妄想など精神病を思わせる症状を呈することもあり,精神科に入院させてから診断されるといった事態も起こるので,臨床医は不明の精神神経症状を呈する患者の中に常に肝性脳症患者がまぎれ込んでいる可能性を念頭に入れておく必要がある.
種々の疾患が肝性脳症の原因となるが,基本的には図のように理解すると容易である.図は肝性脳症の発現機序をアンモニアと未だ同定されていない肝不全因子(肝で代謝されず,血中,脳中に蓄積する中間代謝物,臨床的には中分子量物質が重要と考えている)の組み合わせにより説明しようとするもので,筆者のように実際に治療によって大半の劇症肝炎例を覚醒させている臨床医が実感している機序である.
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