特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
VII.神経糸
8.注目したい疾患
肝性脳症
茂在 敏司
1
1東大・第3内科
pp.1293-1294
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204288
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肝性脳症とは
肝性脳症とはいろいろの肝ないしその周辺の疾患のうえに体液性因子により二次的に脳障害の発展がみられる場合を総称する.代表的なものとして重症肝疾患に伴う脳症と門脈側副路性脳症があげられる.脳症という立場からみると,前者には肝硬変などにみる慢性肝疾患型と劇症肝炎などにみる急性肝疾患型とがある.後者は門脈側副血行の発達が一義的因子となっているもので,錐体外路症状が目立つ例もあるが,多くは発作的に現われる反覆性意識障害を特徴とし,猪瀬型肝脳疾患ともいわれる.中年以後にみられるもので肝硬変,肝線維症,門脈閉塞,時に下大静脈狭窄が基礎となり,腸管内容に由来する有害物質が側副路を通じ脳に直接作用するためきたされる.代表的毒素はアンモニアで,高アンモニア血症の証明が診断根拠の1つとなる.そのほかアミン,インドール,低級脂酸などが問題となっている.これに対し若年者にみられ,基礎疾患として脂肪肝が証明されるものが脳病理の立場から類瘢痕型肝脳疾患として指摘されている.この場合にも高アンモニア血症が証明される.
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