今月の主題 ベッドサイドの痴呆学
痴呆患者のケアと社会的対策
痴呆老人への接し方
森松 光紀
1
1山口大学医学部・神経内科
pp.2152-2153
発行日 1990年10月10日
Published Date 1990/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900562
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痴呆老人への接し方には,①医師,②ナースおよびパラメディカル要員,③家族,の立場はあるが,基本的な考え方は共通する.それは,痴呆という人格崩壊状態にある患者に対しても,同じ人間としての尊厳を認めるという倫理感である.
まず最初に,大部分の痴呆は治らないことを理解すべきである.したがって,患者に対してはケアが中心になり,薬物治療はあくまでも副次的である.ケアの基本的理念を示すと,
1)患者によい生活環境を提供し,できるだけ生活の質を低下させない.
2)記憶や高次大脳機能は早期から失われるが,情動機能はかなり長く保たれる.したがって,情動面での保護・支持が大切である.
3)患者への再教育,説得,叱責は無意味であり,受容的・支持的に対応する.
4)身体的条件の悪化は痴呆を増強し,一方,その改善は精神機能にもよい影響を与える.
5)介護家族への配慮が不可欠である.
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