今月の主題 ベッドサイドの痴呆学
薬物療法のポイント—その効果と限界
痴呆に対する薬物療法の注意事項
葛原 茂樹
1
1三重大学医学部・神経内科
pp.2131-2137
発行日 1990年10月10日
Published Date 1990/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900556
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今日わが国において,原因の如何を問わず,痴呆症状に対して最も多く使用されているのは,脳循環代謝改善薬と呼ばれる一群の薬物である.近年,老年人口の増加につれてこれらの使用量は増加し,その消費額は,今や抗生物質,抗癌剤,降圧剤に迫りつつあると言われている.しかし,これらの薬物は,もともと脳卒中慢性期の精神症状に対して一定の効果が認められているもので,痴呆症状そのものに対して有効性が確認されているものはない.それにもかかわらず,わが国では多くの老年者に,まるで栄養剤のように,多剤が長期にわたって投与されているのが実状である.さらに,近年,これらによる重篤な副作用が大きな問題となったことも記憶に新しい.
本項では,まず現在市販されている脳循環代謝改善薬の種類と特徴を概観した上で,従来の使用法の問題点を検討し,正しい使い方と使用上の注意について解説したい.
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