今月の主題 抗生物質の使い方
抗生物質選択心手順
培養検体の採取方法と限界
熊坂 一成
1
1日本大学医学部・臨床病理
pp.1104-1107
発行日 1990年7月10日
Published Date 1990/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900271
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ある大学病院細菌検査室での出来事である1).創傷部位のガーゼを培養したところ,芽胞形成グラム陽性桿菌が認められた.この患者の検査依頼用紙には,ガス壊疽の疑いがあると記入されていた.そこで検査技師は,検査室のコンサルタントの医師を至急,電話で呼んだ.車を飛ばし駆けつけた彼はまず,グラム染色塗抹標本を観察した.確かに,芽胞形成菌が多数みられたが,Clost-ridium Perfringens(ガス壊疽菌)にしては小型すぎ,どうみても雑菌性のBacillus属としか思えず,納得がいかないので,受持医(研修医)と指導教官を呼んだ.そして,検体採取時の無菌操作の必要性を諄々と説明し,この検体がどのようにして提出されたかを改めて質問した.
やがて研修医は「ガーゼ交換した外科医が床に落とした創傷部のガーゼを拾い上げ,緑膿菌感染の疑いがあるかどうかを調べるために検体を提出した」と告白した.そばにいた指導医は謝った.若い医師は「そんなことを言ったって…」とふくれっ面でまったく反省の態度をみせず,検査室を出ようとした.いつもは温厚な白髪混じりの細菌学者は,たまらず怒った.
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