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腎臓は,われわれが摂取する無限の物質に対応して,1日約200 Lの糸球体濾過と近位尿細管からの分泌を利用して,直ちに,尿として体外に排泄する能力を有しています.この腎臓の驚異的な能力の恩恵をわれわれは日々受けていますが,薬物代謝・動態の点からみると,投与されたほとんどの薬剤とその代謝産物が腎臓に集積することを意味します.よって,薬物療法が中心である内科診療において,腎臓と薬物療法の関係を理解することが必要であると考えられています.さらに,種々の内科系疾患の病態を腎機能が修飾することも多々あります.高齢化が進み腎機能の障害を有する慢性腎臓病の患者が増加するであろうこれからにおいて,腎臓(腎機能)と内科疾患の関係を理解することがますます重要になってくることが想定されます.そこで今回,「腎機能を考慮した内科疾患の診療」という特集を企画しました.
腎臓専門医(元と言うべきかもしれませんが)の視点からみると,
●腎機能低下が疾患の病態を悪化させ,かつ,その治療を困難にする病態・疾患(例:うっ血性心不全の急性増悪時の利尿薬抵抗性,慢性うっ血性心不全に対するガイドラインに基づく薬物療法など)
●薬物療法などの治療により腎機能の低下をきたしやすい病態・疾患(例:疼痛に対する鎮痛薬の使用,肝硬変に伴う腹水への利尿薬の投与など)
●薬物療法などの治療法の選択に正確な腎機能の把握が必要な病態・疾患〔例:抗悪性腫瘍薬の選択(腎臓内科が腎疾患を診療するとき以上に正確な腎機能の把握が必要となる),造影剤の投与など〕
などが,腎機能の考慮が必須である病態・疾患として挙げられます.つまり,「腎機能の悪化さえなければ,問題なく対応可能なのに…」「治療により腎機能が悪化しなければ,うまく対応できたのに…」「腎機能を把握しないと治療法が選択できない…」など,読者の皆様が診療の現場で日々苦慮されていることになろうかと思います.
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