連載 医学古書を紐解く・1【新連載】
古書から何を学ぶか—『危く誤診せんとした経験集』『最終講義』『誤診』
綿貫 聡
1
1東京都立多摩総合医療センター救急・総合診療科
pp.192-195
発行日 2023年1月10日
Published Date 2023/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228715
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症例経験から学ぶ
私が診断エラーに関心を抱いた一番最初のきっかけは,初期研修医の頃から愛読していた福井大学の寺澤秀一先生の『研修医当直御法度—症例帖』(三輪書店)の中に描かれていた「症例経験の振り返りから何を学ぶか?」という視点だったように思う.
こうした本が過去にもあったのだろうかと思い調べてみると,かなり昔まで遡ることができ,1937年に医界展望社という出版社から『危く誤診せんとした経験集』(梅室純三,金原作輔 編)という症例集が出版されていた1).目次には「心臓喘息を気管支喘息に」「血液培養陰性のチフス患者」「診断に先入観は禁物」といった,現代でも発生しかねない症例が並んでいる.各著者は「こういった経験は,他の人にも起こり得るのではないか」という意識で自験例を紹介されていた.
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