特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性
Column
オミクロン変異に対するワクチンの有効性
氏家 無限
1
1国立国際医療研究センター国際感染症センター
pp.517
発行日 2022年3月10日
Published Date 2022/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228110
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2021年11月24日に南アフリカ共和国から世界保健機関(WHO)に報告された新たな新型コロナウイルスの変異体,B.1.1.529(オミクロン)は,2021年12月末までの評価においては,上気道でのウイルス増幅能が高く,伝播性はデルタ変異ウイルスと同等,過去の感染やワクチン接種によって誘導された免疫からの逃避能をもつことから,これまでの流行以上に短期間で感染者数が急増し,ワクチン接種後のブレイクスルー感染が生じやすいと報告されている1).
英国での評価報告ではファイザー製ワクチン接種から2〜4週間後の発症予防効果は約60%であり,15週間後以降では20%未満に低下するとされる1).有効性の高いmRNAワクチンであっても,2回の接種での発症予防効果を維持できる期間は限定的であるが,各製薬企業によれば,ブースター接種を受けることでオミクロン変異ウイルスに対する抗体価はファイザー製ワクチンで約25倍,モデルナ製ワクチンで約37倍に上昇するとされる.英国の暫定的な評価においても,ファイザー製ワクチンのブースター接種2〜4週間後の発症予防効果は約70%となり,10週以上経過すると45%まで低下する.また,モデルナ製ワクチンでも同様に接種後に約75%に改善し,9週間後までは効果を維持できるとされる.これらのことから,各国はブースター接種を急いでおり,欧米中心に2回目接種から4〜5カ月後のブースター接種が推奨されるようになった.また早期にブースター接種を導入したイスラエルのように高齢者や免疫不全者に対して,4回目の新型コロナウイルスワクチンの接種を開始した国も認められる.
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