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はじめに
1958年の報告では,多発血管炎性肉芽腫症(旧:ウェゲナー肉芽腫症)の生存期間中央値は5カ月であった.その約10年後,ステロイドが使用された26症例についての文献的検討では,中央値は12.5カ月に延長していたものの,原因不明の致死的疾患であることには変わりはなかった*1.
しかしその後,FauciとWolffが1973年にステロイドとシクロホスファミドの併用によって14名中12名の患者で「寛解」を達成したと報告し,1992年にはGary Hoffmanらが75%の「完全寛解」を報告した*2.
このように,免疫抑制薬の使用が難治性リウマチ性疾患において生命を救う(Life-saving)働きをすることは,一部の疾患において証明されている.
現時点で,多くのリウマチ性疾患は「治癒」しない.そこで,リウマチ性疾患の治療の目標は,なるべく早期に疾患活動性をゼロに持ち込み(寛解導入),疾患活動性がゼロの状態をなるべく長期に・薬剤副作用を最小限にして維持する(寛解維持)こととなる.
かつて本邦では免疫抑制薬全般にリウマチ性疾患治療のための保険適用がなかったこともあり,寛解導入も寛解維持もステロイドによって行われていた.そのため,さまざまなステロイドパルス療法や長期ステロイド内服に伴う副作用を最小限にする工夫が考案され,場合によっては「疾患を抑えこむために多少の薬剤副反応は『許容』する」という考え方で治療方針が決定されてきた*3.
しかし,現在のリウマチ性疾患治療は,患者の「生命」だけではなく「生活」を守るステージに入ってきており,許容される薬剤副反応の幅は限りなく小さくなっている.そして,ステロイドは可能な限り減量し,可能な限り中止するのが一番の副作用対策である.Life-savingな寛解導入療法の後には,寛解状態を維持しつつ,ステロイドの減量・中止(Steroid-saving)を行うために,比較的副作用の少ない免疫抑制薬を併用するのが現在の考え方の主流である*4.
本稿では,プライマリ・ケアの場で遭遇する機会の多い,主要な経口免疫抑制薬について述べる.ミコフェノール酸モフェチル,シクロホスファミドはいずれもリウマチ性疾患の治療に重要な薬であるが,プライマリ・ケアの場で開始・継続することは稀と思われるので,疾患各論のところでとりあげる.また,リウマチ性疾患に対して使用される各種生物学的製剤には,間違いなく「免疫抑制作用」があるが,これも関節リウマチその他の疾患各論において言及する.
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