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循環器診療における問題点について抵抗なく読めるようにエッセイ風の文調で書き綴り好評を博している『あなたが心電図を読めない本当の理由』や『循環器治療─この薬をつかう本当の理由』などの著者である村川裕二先生が構成・編集に腕をふるった快著である.おおよそ循環器病の臨床は不整脈,虚血性心疾患,弁膜症・心不全などそれぞれ専門性が高く,また新しい治療薬やデバイス,治療法なども次々と導入されており,循環器専門医といえども自信をもって診療することができる守備範囲は限られる.しかしながら,近年,高齢化とともに循環器疾患の危険因子となる生活習慣病を有する症例も増加しており,循環器を専門としない臨床医もさまざまな循環器疾患を合併する患者の診療にあたる機会も多くなっていると思われる.本著はそのような場合に起こってくる多くの疑問点に対し,明快な解決と解説を示している.
本書の優れた特徴は,まず,構成が従来の系統的な枠組みにとらわれずオムニバス形式となっており,どこからでも読みやすいという点である.循環器の本を読むときに,心血管系の解剖や心筋細胞の電気生理から入るのでは辟易することが多いのに対し,本書はどこでも本を開いた所から興味をもって抵抗なく入っていくことができる.また,各チャプターの最初に「結論から先に」として臨床医が認識しておくべき必要最小限の情報が箇条書きで示されており,読者はその根拠と解説をあらかじめ答えがわかった状態で読み進んでいくことになるため,理解が容易になっている.そして,最後に「Take Home Message」としてチャプター全体のエッセンスが明示されている.実際の画像やまとめの表,エビデンスを示す図などが随所に配置され,視覚的な理解を促す配慮がなされている.
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