消化器疾患診療メモ
胆道ジスキネジーの新しい概念:十二指腸乳頭括約筋(Oddi括約筋)機能不全
上野 文昭
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1東海大学大磯病院・内科
pp.1428-1429
発行日 1989年8月10日
Published Date 1989/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222639
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「胆道ジスキネジー」という疾患名は,もしかしたら若手の読者諸氏にはもうすでに馴染みが薄いかも知れない.かっては胆道系疾患を疑わせる症状があり,種々の画像診断検査で胆石やその他の形態的異常を認めない症例では,胆道系の機能異常があるに違いないとのことで,大ざっぱにつけることができた,いってみれば便利な診断名であった.ところが医学の進歩による各種疾患の病態解明の流れに取り残され,漠然とした解釈しか得られなかった「胆道ジスキネジー」は,年々1つの疾患概念としての位置が軽視され,ついに消化器病学の権威ある教科書である,BochusやSleisengerのテキストの最新版では,辛うじて文中にその用語を見出すことができる程度に格下げになってしまった.
では「胆道ジスキネジー」という疾患は過去の存在であり,もうすでに消滅してしまったのであろうか.答えは「ノー」である.過去の臨床医の能力はそのように低いものではない.かつて漠然と診断されていた「胆道ジスキネジー」の少なくとも一部が,最近のテクノロジーを用いて病態解明がすすみ,十二指腸乳頭括約筋(Oddi括約筋)機能不全という名の疾患概念として近年脚光を浴びつつある.
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