今月の主題 内科エマージェンシー
疾患からみた内科エマージェンシー
呼吸器疾患
肺塞栓
中島 明雄
1
,
月野 光博
1
1済生会下関総合病院・呼吸器内科
pp.1208-1210
発行日 1989年7月10日
Published Date 1989/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222573
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肺塞栓症は主として下肢静脈,骨盤腔内静脈に存在した血栓が剥離し,肺動脈を閉塞した結果,肺循環障害を惹起した病態である.その他の塞栓子としては,脂肪,空気,造影剤,タルク,腫瘍細胞などが列挙される.本邦では本症の発生頻度はなお欧米諸国の1/10程度と推定されているが,年々増加を示し,対剖検総数比率でみると,昭和40年代では0.15%,昭和57〜59年度の3年間では0.5%,死因の約1%を占めていると推定されている1).
本症は発症後1時間以内の死亡率が11%2)もの高値を示す重篤な疾患であり,何よりも早期診断,早期治療が必要である.しかしながら,本症に特異的症状や所見はなく,LDH,GOT,GPTなどの血清酵素値は診断的価値は低く,発症初期から臨床診断される率は25%3)と低い.本症の診断の手掛かりは,①何よりも肺塞栓症の発生を疑うこと,②他の疾患を否定すること,である.
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