今月の主題 糖尿病マネージメントUpdate
Editorial
糖尿病学の現況と展望
坂本 信夫
1
1名古屋大学医学部・第3内科
pp.898-899
発行日 1989年6月10日
Published Date 1989/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222486
- 有料閲覧
- 文献概要
糖尿病(以下DM)学の基礎的・臨床的研究は研究技術のめざましい発展によりますます細分化の傾向を強めているが,基本的には成因・診断・病態・治療の分野に主力が注がれていることには変わりはない.
DMが均質な内容をもった単一疾患ではないことが明らかにされてすでに久しいが,この概念は幾多の変遷を経たうえ,今日ではIDDMおよびNIDDMの2大病型に分類されていることは周知の通りである.IDDMがウイルス感染ないし自己免疫を基礎としてインスリン欠乏に陥るタイプであり,NIDDMはインスリン分泌刺激に対する膵島の反応低下,ならびに標的組織のインスリンに対する感受性の低下に基づいてインスリン作用の減弱をもたらすタイプであると一般的には理解されるが,その根拠には今なお不明確な点が多々残されており,今後の研究の進展によっては病型の大幅な再分類を必要とするかも知れない.とくにNIDDMではその発症のしくみにおける先天性素因と後天性誘発因子との関わり合いが,結果的になぜインスリン分泌能の低下,あるいはインスリン感受性の減退として表現されるのか,今のところ全く不明であるといってよく,この基本的問題の解明は急務である.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.