今月の主題 高脂血症と動脈硬化
高脂血症と動脈硬化の基礎
血漿リポ蛋白質とその代謝
松島 照彦
1
,
寺本 民生
1
1東京大学医学部・第1内科
pp.377-381
発行日 1989年3月10日
Published Date 1989/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222345
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●脂質代謝の概要
脂質の生体における機能として,中性脂肪と遊離脂肪酸はエネルギーの蓄積と放出,コレステロールとリン脂質は細胞膜の構築と胆汁成分の構成,および,ステロイド系,プロスタグランディン系物質の前駆体となる役割を持っている.しかし,これら脂質の産生については,各組織にもある程度の合成能はあるものの,もっぱら,腸管から吸収された食事性脂質に由来するか,または,内因性には肝臓において生合成され,各末梢組織には血流(またはリンパ流)に乗って運ばれることになる.運搬や蓄積に際しては化学的により安定な中性脂肪,コレステロールエステルの形をとるが,これらは水に不溶性のため,血流中では周囲を界面活性のある分子に被われて分散したミセルである「リポ蛋白」の形をとって存在し代謝される.このリポ蛋白表層部を構成する界面活性物質は,リン脂質,遊離のコレステロール,および,両親媒性を持つアポ蛋白である(図1).
リポ蛋白は特異的ないくつかの酵素と受容体によって代謝されるが,リポ蛋白自体,固有の構成を持つ数種の分画として存在し,しかも,個々が複合粒子であるため,各分画の各構成成分がそれぞれ目的の場所で代謝されるように調節されなければならない.その代謝を効率よく制御しているのがリポ蛋白表層部に存在する数種のアポ蛋白である.
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