今月の主題 高脂血症と動脈硬化
高脂血症と動脈硬化の基礎
高脂血症の分子生物学
松本 明世
1
,
長縄 聡
1
,
板倉 弘重
1
1国立栄養研究所・病態栄養部
pp.382-383
発行日 1989年3月10日
Published Date 1989/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222346
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高脂血症は,コレステロール(TC)や中性脂肪(TG)など血清脂質と蛋白との複合体であるリポ蛋白の合成と異化速度の異常により起こる病態で,栄養,運動,ストレスあるいは他の代謝疾患の合併など環境因子,および遺伝因子とにより発症する.遺伝因子として,低密度リポ蛋白(LDL)受容体,リポ蛋白代謝関連酵素およびアポリポ蛋白(アポ蛋白)などの先天的異常や欠損が知られている.そして,これら蛋白の異常や欠損は,遺伝子DNA上の欠失,挿入および置換などの変異に起因していることが明らかにされてきた.これらの研究は遺伝子操作やモノクローナル抗体などバイオテクノロジーの導入により急速に進展し,数多くの貴重な成果が得られている1),これらの中で,1985年のBrownとGoldstein博士らのLDL受容体の研究成果に対しノーベル賞が贈られたことは未だ記憶に新しいことであり,LDL受容体の異常による家族性高脂血症にっいて分子遺伝学的解析が進んでいる2).
リポ蛋白の蛋白成分であるアポ蛋白はリポ蛋白粒子の構造維持をはじめ,脂質の転送,レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)や,リポ蛋白リパーゼ(LPL)などリポ蛋白代謝酵素の活性調節因子,LDL受容体などリポ蛋白受容体の特異的リガンドなどとして代謝調節に重要な機能を有している.したがって,アポ蛋白に異常があるとリポ蛋白の合成や異化が障害され低脂血症や高脂血症を呈することになる.
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