今月の主題 高脂血症と動脈硬化
Editorial
動脈硬化の成因における高脂血症の役割
大内 尉義
1
1東京大学医学部・老年病学
pp.374-376
発行日 1989年3月10日
Published Date 1989/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222344
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糖尿病,高血圧など多くの成人病の予後を決定するのは結局のところ動脈硬化をはじめとする血管障害である.この意味で,血管障害,特に,臨床的に最も問題となる粥状硬化(Atherosclerosis)の成因を解明し,その治療あるいは予防法を開発することは,現代の医学にとって大きな課題の一つである.
動脈の粥状硬化症(以下,動脈硬化)の成因にコレステロールなど脂質が関係していることは古くから知られており,実際,実験的にも高コレステロール食の投与により著明な動脈硬化病変を動物に作ることができるし,またFramingham Study1)あるいは最近のMultiple Risk Factor Interventional Trial(MRFIT)2)を始めとする多くの疫学的研究でも,血中コレステロール濃度の高いほど冠動脈疾患による死亡率の高いことが示されている.しかし,高脂血症がどのような機序で動脈硬化の発症,進展を促すのかという問題については,このような疫学的研究からは明らかにしえず,近年の細胞生物学,分子生物学など新しい手法の導入を待たなければならなかった.本稿では動脈硬化の発症・進展における脂質の役割がどのように解明されてきたか最近の進歩について述べる.
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