実践診療 dos and don'ts
女性患者の問診
板東 浩
1
1徳島大学医学部・第1内科
pp.2726
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222212
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うら若き美しい女性が腹部不定愁訴で,ある病院の内科外来を受診した.若い研修医は,月経に関する問診を忘れることがある.「生理は順調ですか」.このような質問は良くない.「はい」という返事しか返ってこない.「生理に変わりはありませんか」「最終の月経はいつですか」と尋ねるが,付き添いがいると真実を引き出せない.しかし,1人で来ていても,プライバシーを保てる診察室は稀で,他の外来患者にすべてつつぬけである.「小水を検査しましょう」と,だまって検査箋のゴナビスに丸を入れる.よく気が付くが経験の浅い看護婦がわざわざ念をおす,「先生,妊娠反応ですね!」.患者はうつむいて,逃げるように診察室を出ていく.
小生は,自分なりに問診の方法を工夫した.必要なhistory-takingを終えて,患者の血圧を測定する時に,耳元で囁く.「あれの可能性は,ないということはないでしょう,あるとしたらいつ頃だったんですか」.人間は「いいえ」と言いにくいものである.「はい」とは答えやすい.「はい」と返事をしたくない女性は「大体○月中旬くらいです」との返事が返ってくる.何もしゃべりたくない女性は無言でうなずく.また,non-verbal communicationで,眼差しでYesという女性や,小生をじっと見つめてこちらで雰囲気を察知せねばならない女性もいる.小生は,誘導尋問の専門家でないし,いろんな状況を見極めて判断できるほどの経験もない.
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