今月の主題 腎疾患診療の実際
糸球体腎炎—その診断と治療
機会蛋白尿(chance proteinuria),機会血尿(chance hematuria)をどうするか
村上 睦美
1
,
植田 穣
1
1日本医科大学・小児科
pp.2588-2590
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222177
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
尿の蛋白と潜血反応を指標として腎疾患を発見しようとする集団検尿においては,腎疾患を有する者の数倍の尿異常者が拾い上げられる.早朝尿を2回検査する方式(東京方式)で小・中学生に学校集団検尿を行うと,尿異常者の頻度は,昭和49年度から61年度までの平均で,小学生では蛋白陽性率が0.08%,潜血反応陽性率が0.54%,蛋白潜血両者陽性者が0.03%であり,中学生ではそれぞれ0.37%,0.94%,0.08%であった.これらと病院を対象に調査した慢性に経過する腎臓病の有病率を比較すると,集団検尿では人口10万人に対し,尿異常者が小学生では650人,中学生では1,390人存在するのに比して,慢性に経過する腎臓病を有する者は人口10万人に対し小学生で約100人,中学生で約150人であると推定されている1).
このように腎臓病の発見を目的とした場合に,集団検尿は過剰な陽性頻度を持っていると考えられ,これらで発見された機会蛋白尿(chance proteinuria)や機会血尿(chance hematuria)の症例をどのように取り扱うかは大きな問題である.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.