増刊号 診断基準とその使い方
XI.小児
22.注意欠陥多動障害・学習障害(微細脳機能不全)
長畑 正道
1
1筑波大学・心身障害学系
pp.2340-2344
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222112
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
微細脳機能不全(minimal brain dysfunction,MBD)とはClements1)によると次のように定義されている.すなわち「微細脳機能不全といわれるものは,知能がほぼ正常か正常以上の子どもで,さまざまな程度の学習あるいは行動上の問題を有しているもののことである.そしてかかる障害は中枢神経系の機能障害に由来するものと考えられている.この機能障害は認知・概念構成・言語・記憶および注意力・衝動あるいは運動機能のコントロールなどの面に単独あるいは種々の組合わせで出現する.」となっている.つまりMBDには行動面の異常がみられる場合と認知・学習面の異常がみられる場合とがあり,また両者が合併することもある.
しかし,最近はMBDという用語は次第に用いられなくなってきた.脳障害ないし脳機能不全があると診断されると,たとえ微細であるにしても親や子どもが絶望的になってしまい,そのうえ現在の医学的検査では症状の他に脳機能不全を立証することがまだできない状態であるからである.したがって現状では原因を思わせる診断名をさけ,状態像のみをあらわす診断名にするのがより適切である.つまりMBDの代わりに注意欠陥多動障害あるいは学習障害(特異的発達障害)とするのが最近の傾向である.そこで診断基準の解説にあたってもこの2つに分けて述べることにする.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.