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はじめに
注意欠陥/多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;AD/HD)は,米国では学童において3~7%の有病率が報告されている,児童精神医学領域ではもっとも有病率の高い障害の1つである。DSM-IV1)およびICD-1010)では,広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders;PDD)であればAD/HDとは診断しないとされているが,不注意や社会性の障害など,両者は臨床的な類似性を有している2,9)。特に精神遅滞を伴わない(すなわちIQ70以上の)高機能PDDでは,対人関係障害などが比較的軽く,言語表出に障害がないため,AD/HDとの混同が生じうる。
PDDの一型であるアスペルガー障害(症候群)(Asperger's Disorder;ASD)は,言語表出に遅れがなく,そのほとんどが高機能PDDである。Ehlersら3)は0.36%という比較的高いアスペルガー症候群の有病率を報告しており,このことは,臨床現場でのASDとAD/HDの適切な区別の重要性を示している。
筆者らの知るかぎり,これまでにWISC-III(Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition)を用いてASDとAD/HDの認知プロフィールを比較検討した研究は,内外ともにない。Nydenら7)はアスペルガー症候群,AD/HD群にWISC-IIIを施行しているが,各群のテスト再現性を検討したにとどまっている。筆者ら5)は以前,高機能PDDとAD/HDでのWISC-IIIプロフィールの比較結果を報告したが,今回は新たにケースを追加し,ASDとAD/HDのWISC-IIIプロフィールについて興味深い知見を得たので報告する。
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