増刊号 診断基準とその使い方
IX.腎・尿路
33.透析脳症
鈴木 正司
1
1信楽園病院・腎センター
pp.2187
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222052
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■疾患概念と疫学
本症は長期透析を受けている慢性腎不全例に出現する,特有な代謝性脳症である1).その本態は,アルミニウム(Al)過剰蓄積によるものと考えられている2).本邦での発生は比較的少ないが3),かつては欧米,豪州の各国で,一定地域内の透析施設に多発する傾向にあった.透析液中の高濃度のAlがその主要原因となり,100〜500μg/lを超えていると本症発現の危険性が高い.高濃度では数カ月でも発症する.近年,原水中のAl含量が多い施設では水処理を完全に行うようになったため,本症発現は激減している.稀にはAl含量が安全域(5〜10μg/l)の施設での本症発現例が報告されているが,この場合には経口摂取されたAl含有制酸剤や燐キレート剤が原因と判断される.
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