増刊号 診断基準とその使い方
VII.血液
22.特発性血小板減少性紫斑病
野村 武夫
1
1日本医科大学・第3内科
pp.2060-2063
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222001
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■診断基準(表1)
■疾患概念と疫学
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は,特発性という病名が示すように,原因不明の血小板減少に基づく出血を主要症状とする疾患である.ITPでは血小板の血管内寿命が著しい短縮を示すが,これは血小板が早期に脾,肝などの細網細胞によって捕捉処理されるためである.ITPの血小板には,正常に比べ大量の免疫グロブリンが付着しており(PAIgG),血漿中にもしばしば血小板と結合する免疫グロブリン(PBIgG)の増量が証明される.PAIgGおよびPBIgGの少なくとも一部は抗血小板自己抗体であり,これが結合した血小板はFcレセプターを介して細網細胞に取り込まれてしまうため,流血中の血小板が減少すると考えられている.
すなわち,ITPは自己免疫性疾患であるとみなす見解が一般的であり,そこで,ITPのIは免疫性immuneのイニシアルと理解するむきもある(さらに詳しくautoimmuneと規定し,本症にATPの略語をあてることがある).しかし,抗血小板自己抗体がどのようにして,なぜ生成されるのかという問題は依然として不明のまま残されており,この観点から,Iはやはり特発性idiopathicの略号としておくのがよい.
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