増刊号 診断基準とその使い方
I.循環器
19.左脚後枝ブロック
鈴木 文男
1
1東京医科歯科大学医学部・第1内科
pp.1725
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221874
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■診断基準(表)
■疾患概念と疫学
左室内に分布する左脚は2本の分枝,すなわち左脚前枝と左脚後枝に分かれているが,そのうち左脚後枝の伝導が完全に途絶したものが左脚後枝ブロックで,この場合,左室の興奮は左脚前枝のみから始まる.後枝ブロックでは,前枝支配領域である前壁側壁より興奮が始まり,後枝支配領域である後壁下壁は,前枝後枝間の末梢プルキンエ線維網を通じて遅れて逆行性に興奮させられる.このために,心電図上,QRS軸は右軸偏位(+90°〜+120°)をとり,また,QRS幅は0.02秒以内の延長を示す.
左脚後枝は比較的短くて厚い分枝であるということ,左右両冠動脈より二重の血流支配を受けていることなどのために,右脚を含む3本の心室内刺激伝導系のうち,最もブロックを起こしにくい分枝となっている.このために,単独の左脚後枝ブロックが他の分枝ブロックを合併せずに起こることはほとんどありえないとも考えられている.
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