今月の主題 老人診療のポイント
症候・病態の特徴
貧血
宮﨑 保
1
,
大原 行雄
1
,
桜田 恵右
1
1北海道大学医学部・第3内科
pp.1328-1330
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221783
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
わが国も長寿社会となり,平均年齢は男子75.23歳,女子80.93歳と報告され,医学的にも多くの問題が多い.その中に貧血がある1).老人(60歳以上とする考え方が多いが,最近では65歳以上とされつつある.)では成人に比較して各臓器および各組織に老年性変化を来し,造血組織である骨髄にも脂肪組織が増加して造血能力が低下し,加齢に伴う諸臓器の機能低下による体内酸素需要の低下→腎におけるエリトロポエチン(EPO)産生低下→造赤血球能低下,EPO感受性細胞(赤芽球系幹細胞)の減少,男性ホルモンなど造血関係ホルモン分泌の低下,骨髄内動脈硬化による造血組織への栄養物質補給の低下による骨髄萎縮,形成不全がみられ,結果として末梢血で赤血球数,ヘモグロビン量の減少を示すが(生理的老人性貧血),老人といえども日常生活を営んでいる者では正常青壮年者と変わりないとも考えられている.なお,貧血と共に白血球減少and/or血小板減少を伴うことのあることを知るべきである.
老人にみられる貧血には,基礎疾患に続発する二次性貧血が多いので,その原因を検索することが肝要である.一方,骨髄に問題があって貧血を示すものとして悪性貧血,鉄芽球性貧血をはじめ,不応性貧血がとくに多くの関心を集めているが,とくに白血病への移行が問題とされている.
以下,貧血の診断,成因別頻度,鉄欠乏性貧血,鉄芽球性貧血,不応性貧血について述べる.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.