今月の主題 高血圧治療のポイント
合併症を伴った高血圧の治療
透析患者の高血圧
多川 斉
1
1三井記念病院内科・腎センター
pp.1192-1193
発行日 1988年7月10日
Published Date 1988/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221756
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本態性高血圧症の成因がいまだに解明されていないのと同じように,腎機能障害に伴う高血圧の発症機序も明らかではない.しかし,Vertesら1)の報告以来,透析患者の高血圧は大きく2つに分類されている.第1は腎の水・Na排泄障害に基づく体液貯留によるものであり,体液量依存性高血圧と呼ばれる.第2は末梢血管抵抗の増大によるものであり,レニン・アンジオテンシン系が重要な規定因子であることから,レニン依存性高血圧と呼ばれる.前者では透析による除水に伴って血圧は下降するが,後者では除水に伴ってレニン分泌が促進され,血圧がかえって上昇することがある.実際にはこれら2つの因子が同時に関与することが多く,筆者らは,体液量依存性高血圧と考えられる導入期透析症例においても,レニン。アンジオテンシン系が重要な役割を果たしていることを報告した2).
このように,透析患者の高血圧の成因には体液量の増大と末梢血管収縮が関与していることから,降圧療法の基本は,体液量の是正と薬剤による末梢血管拡張である.
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