今月の主題 肝硬変と肝癌
診断と治療の未来への展望
市田 文弘
1
1新潟大学医学部・第3内科
pp.1532-1533
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221076
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肝硬変の臨床的概念1)としては,慢性に経過する疾患であって,形態学的特徴を反映して,①肝細胞障害による肝機能の低下,②門脈圧亢進,③門脈一肝静脈間,および門脈一大静脈間の短絡形成という基本的な病変のいずれかに基づき,あるいはそれらのすべての組み合わせによって,症状が出現するものと理解され,種々の程度の肝機能不全と門脈圧亢進症状が認められる.その診断は,従来は腹腔鏡検査,肝生検などの形態学的検査と血液生化学的検査成績を組み合わせて行われていた.しかし,近年,X線CTスキャン,超音波検査,RIシンチグラム,MRIなどの非侵襲性の画像検査が加わって肝硬変の典型例の診断は容易になった.
しかし,腹腔鏡検査においても問題はないわけではない.例えば,硬変肝の硬度や容積の数量化,脾腫との関連性,あるいは結節の大きさによる病型分類の試みなどの問題が残されている.また画像検査においても,肝硬変の画像上の特徴は,あくまでも完成した典型例のものであり,初期例では慢性肝炎やアルコール性肝線維症との画像上の鑑別は困難であり,肝生検による組織学的診断の力を借りなければならない.また,血液生化学的検査においても,間葉系反応の亢進による血液免疫グロブリンの上昇,有効肝血流量の低下,肝予備能の状態などによって肝硬変の進展度を予測しているが,肝硬変は代償期から非代償期までの広範囲に及ぶ疾患であり,これらの検査成績のみからは判断が難しいことが多い.
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