今月の主題 糖尿病診療の現況
合併症の治療と患者指導
起立性低血圧と無力性膀胱の治療
姫井 孟
1
,
宮下 雄博
1
1岡山赤十字病院・内科
pp.64-65
発行日 1987年1月10日
Published Date 1987/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220766
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起立性低血圧の治療
糖尿病性自律神経障害でとくに交感神経が障害をうけると,起立時の末梢血管床における細動脈の反射性収縮が起こらず,末梢血管抵抗は低下し,静脈血の還流減少による心拍出量の減少と血圧の低下が起こる.起立により収縮期血圧が30mmHg以上降下し,何らかの症状が出る場合には治療が必要になる1).インスリン使用者では,低血糖によるふるえ,冷汗などに加えてめまいを訴える例もあり,低血糖との鑑別が必要であるが,自律神経障害が高度の例では,低血糖が無自覚に起こることがあり,注意を要する.起立性低血圧を助長する可能性のある薬剤として,tranquilizer,guanethidin,betanide,methyldopa,a-blockerなどがある.投与されていた場合は薬剤を中止し,頭部を挙上して寝ることを勧め,急激な体位の変換を避けるように指導する.腹部圧迫バンドや弾性肌着は下半身への血液貯留を防止するために用いるが,静脈血の還流障害を起こさないようにしなければならない.極度の水分制限や,長期にわたる塩分制限も,循環血液量の減少による起立性低血圧を惹起する原因になり得る2).
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