一冊の本
「The Logic of Scientific Discovery, 2nd ed.」—(K. R. Popper, Harper Torchbook, 1968.大内義一・森博訳—「科学的発見の論理」恒星社厚生閣刊,1971年7月)
倉科 周介
1
1東京都臨床医学総合研究所・診療方法論研究室
pp.2159
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220657
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人は言葉によって思考する.その結果を表現し,記録し,伝達するのも,多くの場合また言葉である.論理が思考活動の産物なるが故に,言葉はまた論理を操作する手段であり,同時に論理の写像たる性格を帯びる.
古来,論理学の中軸たりし形式論理学の主目標が言語表現の論理性の追求におかれ,その現代の嫡子たる記号論理学が,言語を含めた記号系による論理の記述と分析をもって,客体としての論理に迫る有力な手段と目したのも故なしとしない.今日の論理学が語用論,意味論,構文論など,言語学出自の概念に依存する所が大きいのも,この間の事情を如実に物語る.また論理数学とコンピュータの発達は,如上の方向の延長上で,論理を定量的,機械的に処理することが容易であるかの如き期待を,一般に懐かせるに充分であった.
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