カラーグラフ リンパ節疾患の臨床病理
猫ひっ掻き病
山科 元章
1
,
片山 勲
1
1埼玉医科大学・第1病理
pp.1933-1936
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220616
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
猫ひっ掻き病(cat scratch disease,以下CSD)は,その名が示すごとく,猫にひっ掻かれた皮膚の傷から始まる全身症状および局所のリンパ節炎を総称する病気であり,臨床的に猫にひっ掻かれたという既往とリンパ節炎の関連が明らかであれぼ,リンパ節腫脹に対して病理学的検索を行う必要はない.しかし,しばしば猫と接触したという既往が追及されなかったり,また2〜4週間という潜伏期間の後に単なる皮膚の傷に比べてより著明なリンパ節腫脹がみられることなどから,悪性リンパ腫を疑って生検され,病理学的診断が求められる例は少なくない.
さて,これまでにこのCSDは猫を媒体とする感染症として,病気の本質は確立したように考えられているが,感染症そのものをひき起こす原因微生物については,クラミディアではないかと推測されているだけで,確証はない.この推測は,CSDと似た組織像を呈する鼠径リンパ肉芽腫(lymphgranuloma inguinale,第四性病)の原因がクラミディアによること,そして,ときにCSDと鼠径リンパ肉芽腫の患者の血清に同じクラミディアに対する交差反応がみられることなどに依存している.ところで,最近CSDと確認されたリンパ節病変内にグラム陰性菌が染色されたという報告が相次いでみられ,ようやく形態学的には,CSDの細菌感染症としての位置が確立されようとしている.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.