今月の主題 体液・電解質補正の実際
輸液の必要な患者へのアプローチ
和田 孝雄
1
1慶応義塾大学医学部・内科
pp.932-934
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220385
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昔から名医といわれた人々は,診察室に入って来る患者の動作や顔つきによって,瞬時にして病態を見抜くことができたとされる.彼らは患者が何を望んで来院したかを,いわれぬうちから察知する能力を有していたのである.これに対して藪医者といわれる人々には,悲しいかなこの能力が備わっていない.この,先を見通す能力はその後の患者の予後を判断する能力にも通ずる.藪というのは先の見通しがききにくいという意味から生じたものであるという.藪よりも見通しが悪く,全く見えない医師を土手医者とよぶと聞くにおよんで,まあなんと素晴らしい古人の知恵であるかと思う.これらの表現は明らかに物事の本質をとらえている.
しかし,名医でもない,さりとて藪医者でもない平均的な医師(私自身もそうであると信じているが)としては,先天的能力の欠如をカバーするために,あらかじめ決めておいた手順にしたがって,つまり系統的な情報収集法を採用することが多い.これもまた古人からさずかった知恵のひとつである.
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