一冊の本
「結核の病理」—(岩崎 龍郎,保健同人社刊,昭和26年10月発行)
梅田 博道
1
1藤田学園保健衛生大学内科
pp.917
発行日 1986年5月10日
Published Date 1986/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220382
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昭和24年春,私はフレッシュマン出張で,国立療養所天龍荘に赴任した.敗戦直後のことで,食糧事情は悪く暗い時代ではあったが,私は国民病と対決する心意気で胸をふくらませていた.結核のことなら何でもやる.内科も外科もない.細菌検査も病理解剖も.小野譲先生の講習会に上京し,気管支鏡の手技も身につけた.テレビなど無い時代だから,X線透視に眼をならすため朝から色眼鏡をかけ,食事もそのままとる.人工気胸,ヤコベース,胸成術とスケジュールは決っている.ひまをみつけてはCorrylosのKollaps Therapieをひもとく.
そのような頃,私のあこがれの人は岩崎龍郎先生であった.人里離れた山の療養所で,今と違って自動車などとても使える身分ではない.しかし,「岩崎先生来る!!」の知らせをうけると,先生の講義をききに浜松まで,喜々として出掛けたものである.だから,岩崎龍郎先生の「結核の病理」が発行されると,この本は直ちに私のバイブルとなった.
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