今月の主題 内分泌疾患の新たな展開
新しい内分泌検査とその臨床的意義
GRF負荷試験
千原 和夫
1
1神戸大学医学部・第3内科
pp.412-414
発行日 1985年3月10日
Published Date 1985/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219655
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成長ホルモン放出因子(Growth Hormone Releas-ing Factor, GRF)の構造決定に至る経緯はユニークであった.10年以上にわたる視床下部からのGRFの単離は,共存するSomatostatin(GH放出抑制因子)のためBioassay上のトラブルを生じ,不成功に終った.1982年GuilleminらとValeらの研究グループは,それぞれ別々に,末端肥大症をきたした患者の膵腫瘍から異所性に産生・分泌されていたGRFに注目し,その一次構造を解明した(図1).当初,GRFは44個のペプチドのほかにN端側37個および40個のペプチドの3種類が存在するとされていたが,核酸構造には44個のペプチドに対応する形で組み込まれていることが明らかにされ,44個のものが本来のGRFであると考えられている.
膵腫瘍由来のGRFに対して作製された抗体を用いて,ヒト視床下部を免疫組織化学的に調べると,正中隆起の下垂体門脈周辺にGRF含有神経の神経終末が豊富に存在し,その神経の細胞体は,主に弓状核に分布していた.ヒト視床下部抽出部からGRFを精製,構造決定したLingらは,その構造が膵腫瘍由来の44個のGRFと完全に一致していたと報告した.すなわち,膵腫瘍からその構造が解明されたGRFは,生理的な状態でヒト視床下部に存在する内因性GRFそのものであったわけである.
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