講座 小児診療のコツ・10
チック症,夜尿症
松川 武平
1
,
久徳 重盛
1
Buhei Matsukawa
1
,
Shigemori Kyutoku
1
1久徳クリニック
pp.747-752
発行日 1984年4月10日
Published Date 1984/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219011
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チック症
Kanner1)は,チック症を「突然起こって不随意的に頻繁にくり返される一群の筋肉の無目的な早い運動」と定義している.その症状としては,まばたき,顔をしかめるなどの顔面チックをはじめ,首振り,肩を上下する,手腕および下肢を奇異に動かす,声を出す(vocal tic)などの全身性チックにまで至る.ときには咳嗽様の症状を呈することもある.これらの不随意運動の発生機序は,錐体外路系の何らかの障害が基盤にあり,それに心理的要因が重なり合って発現するものと考えられている2).錐体外路系の障害に関してはいまだ不明であるが,中枢神経刺激伝達物質の関与が注目されている3,4).しかし,その発症には心理的要因の関与が大きく,緊張したり興奮したりすると症状が増強するし,暇で退屈なときにも増強されることより,心理的な問題が引き金になっていることは間違いないようである.これらの子どもたちは,行動面では落ち着きがなく,神経症的傾向,感情的未熟さ,また社会性の乏しい性格の子が多く,養育歴上の問題が大きいようである.とくに親子間での緊張や葛藤が見られる場合が多く,兄弟や親に対し強い憎しみを感じていたり,親子間での接触が少ないために愛情飢餓状態にある者が多い.
また,親が症状を注意したり,不安になっていたりすると二次性のストレスが加わり,症状が増強することもある.
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