臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
XII.癌
癌化学療法・放射線療法の副作用の予防と治療
238.心筋障害
中山 龍
1
,
小池 明郎
1
Ryu Nakayama
1
,
Akero Koike
1
1国立循環器病センター病院・心臓血管内科
pp.2634-2635
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218779
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症例
強い呼吸困難を主訴とする48歳の女性が入院した.入院時心拍数130/分,血圧90/50mmHg,眼球結膜に黄疸を認め,著明な頚静脈怒張,両側心基部にラ音,重合奔馬調,三尖弁閉鎖不全による全収縮期雑音,拍動性の肝,前脛骨部に浮腫あり.心電図では洞性頻脈,低電位差,V1で大きい陰性P波,胸部X線像では強い肺鬱血と心陰影の拡大あり,心エコー所見など諸情報を総合し,心筋症による心不全と診断した.しかし少なくとも発症の6カ月前までは,高血圧,異常心電図,異常心エコー所見などは認めていない.既往歴には,16年前乳癌で右乳房切除術をうけ,2年後,切除部位の胸郭に再発あり,放射線治療,卵巣摘出術をうけている.さらに10年後には右腋窩に潰瘍を生じ,骨転移が見出されたので,adriamycin(ADMと略す)単独3週間間隔6カ月間,全量580mg/sqmを投与された.ADM投与終了後発症まで3年を経過しているが,諸検査の結果,本症の心筋症はADM由来のものと考えられた.
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