今月の主題 各種病態における抗生物質の使い方
腎・泌尿器疾患
慢性複雑性尿路感染症
河田 幸道
1
Yukimichi Kawada
1
1福井医科大学・泌尿器科
pp.1894-1895
発行日 1983年11月10日
Published Date 1983/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218511
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複雑性尿路感染症はなんらかの基礎疾患を有する尿路感染症であり,大部分が慢性に経過する.基礎疾患としては,前立腺肥大症や尿道狭窄などの下部尿路通過障害や神経因性膀胱,また水腎症や膀胱尿管逆流,さらに尿路の結石や腫瘍など多岐にわたるが,これらは一般に高年齢層に多いことから,複雑性尿路感染症も70歳台をピークとした高齢者に多く,また女性より男性に多い.
基礎疾患のない単純性尿路感染症では化学療法がよく奏効し,これのみで治癒させることができるが,複雑性尿路感染症では化学療法の効果は一般に低く,近年強力かつ抗菌スペクトルの広い抗菌剤の開発にともない,その治療効果は著明に改善しつつあるものの,基礎疾患を除去しないかぎり容易に再発をきたし,感染を根治させることは一般に困難である.したがって複雑性尿路感染症の診断に際しては,各種の泌尿器科的検査法により同時に基礎疾患の診断を行い,治療としては化学療法のみでなく基礎疾患に対する治療を行うことが必須である.
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