今月の主題 血清リポ蛋白の異常
リポ蛋白をめぐるトピックス
長寿とHDLコレステロール
板倉 弘重
1
Hiroshige Itakura
1
1東京大学医学部・第3内科
pp.862-863
発行日 1982年5月10日
Published Date 1982/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217759
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長寿症候群と家族性高αリポ蛋白血症
1976年Glueckらは,長寿症候群(longevity syndrome)として家族性高αリポ蛋白血症と低βリポ蛋白血症を報告した.これらの家系では長生きしている者が多く,動脈硬化罹患者が少ないとされる.これらの長寿症候群に共通していることは,LDL,CとHDL-Cとの比が1に近いことであり,対照群の2.41±0.21よりも低値であり,LDL-CとHDL-Cとがほぼ同量であることが動脈硬化の進展を抑制し,心筋梗塞による死亡率を低下せしめて寿命を延長させていると報告した.
HDL-Cをヘパリン-Mn2+法で測定し,70 mg/dl以上を高αリポ蛋白血症としている.常染色体優性遺伝を示し,総コレステロールはやや高く,トリグリセライドは正常である.身体所見,神経所見に異常なく健康体とされる.Nestelらは,コレステロールのラジオアイソトープを用いて高αリポ蛋白血症におけるコレステロール代謝について検討し,表に示したごとく,高αリポ蛋白血症では交換速度のおそいコレステロールプール(pool B)が小さく,コレステロール代謝回転率が低下している.一方,交換速度のはやいコレステロールプール(pool A)は対照群と変わらず,pool Aとpool Bとの相互の移行,pool Aからのコレステロールの不可逆的移送も対照群と差がみられない.
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