今月の主題 狭心症とその周辺
虚血性心臓病の診断
心エコー図—動的運動負荷
松崎 益徳
1
,
楠川 禮造
1
Masunori Matsuzaki
1
,
Reizo Kusukawa
1
1山口大学医学部・第2内科
pp.632-635
発行日 1982年4月10日
Published Date 1982/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217709
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近年,急速に発展してきた心エコー図は,Mモード法に超音波断層法two dimensional echocardiographyが加わり,心臓の大部分を定性的のみならず定量的にも観察することが可能となってきた.現在,非観血的に心腔の大きさや壁挙動,その壁厚の変化を経時的に計測できる方法は,心エコー図しかないといっても過言ではなく,とくに冠動脈疾患患者の急性な左室挙動の変化を,経時的に記録できることの臨床的意義は大きい.
冠動脈狭窄を有する患者において,その狭窄血管により供給される心筋の挙動は,その心筋の酸素需要量と心筋への酸素供給量とのバランスにより規定される.過去に心筋梗塞の既往がなく,現在,虚血が進行していない時期には,狭窄冠動脈の支配下にある局所心室壁でも,その挙動は正常であることが多い.このような例は,局所心筋の酸素需要量と供給量とのバランスがcriticalなレベルで保たれているためである.したがって,このような患者では,安静時に心エコー図や心室造影などによる心室壁挙動の観察からは,狭心症を診断することは困難である.しかし,局所心筋の酸素需要量と供給量の両者いずれかを変化させ,そのバランスを崩すことにより局所心筋は容易に虚血に陥り,壁挙動にも異常が出現する.
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