臨床薬理学 薬物療法の考え方・9
臨床薬効評価(1)
中野 重行
1
Shigeyuki NAKANO
1
1愛媛大学医学部・薬理学
pp.2139-2143
発行日 1981年12月10日
Published Date 1981/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217557
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薬物療法の基本は,「患者の病態生理から考えて最も適した薬物を選択し,その患者個人に最も適した薬物量を,最も適した方法で投与することを通じて,その治療の有効性と安全性を最大限に高める」ことにあるが,このことは今までにくり返し述べてきた.そのためには,薬物動態学の知識にもとづいた投与量と投与間隔の設計法の利用が有力な手段となりうる.また,薬物の同時併用時にみられる薬物相互作用の知識も不可欠となる.しかし,最も適した薬物を選択するためには,そのために役立つ信頼性ある科学的なデータが存在することが必要である.
さてそれでは,ある病態像の患者に投与した薬物がその病態の正常化に役立っているのかいないのか(すなわち効いているのか効いていないのか)は,どのようにして判定できるのであろうか? 前回は,薬物投与中に患者に生じた種々の治療上好ましくない症状が,はたして薬物のために生じたもの(薬物による有害反応)であるのかないのかの判定がしばしば非常に困難であること,さらにはその困難さへの対処のしかたについて述べた.一方,薬物の治療効果(有効性)の評価に関しては,薬物の有害反応の評価に類似した難しさを有しつつも,現在ある程度広く認められた方法が確立されている.
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