今月の主題 肺機能検査から疾患肺へ
各種肺疾患と機能検査
心疾患—MSを中心に
石川 皓
1
Koh ISHIKAWA
1
1国立水戸病院・循環器科
pp.2082-2084
発行日 1981年12月10日
Published Date 1981/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217543
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僧帽弁狭窄症(MSと略す)の肺機能障害の主因をなすものは肺うつ血であり,この点では急性心筋梗塞,高血圧性心疾患などによる左心不全に共通する.すなわち左房圧の上昇に伴い肺静脈圧,肺毛細管圧(心カテーテル検査における肺動脈模入圧)は上昇し,怒張した血管による細気管支の閉塞,さらに間質組織,肺胞の浮腫により,換気機能,換気/血流分布,拡散機能は障害される.MSの特異な点は,肺静脈圧の上昇が長年にわたって徐々に生じてくるため,肺循環状態に適応する時間的余裕があることで,たとえばリンパ管の増大によるドレナージなどにより,急性心筋梗塞時にみられるような急性肺浮腫は生じ難い.MSにおいて臨床的に肺浮腫を証明する場合には,肺静脈圧はかなりの高値を示すものである.従来よりMSの重症度と肺機能障害とは相関するとされ,外科的適応の際の参考にされているが,近年従来の肺機能検査では正常域にある軽症のMSにおいて,細気管支領域に閉塞性障害を有することが示唆され注目される.
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