今月の主題 腹部エコー法の現況—癌診断を中心に
癌に対する超音波診断の現況と将来
和賀井 敏夫
1
Toshio WAGAI
1
1順天堂大学医学部・超音波医学研究センター
pp.1126-1128
発行日 1981年7月10日
Published Date 1981/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217233
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各種の物理的エネルギーを新たに医学や医療面に利用しようと試みる場合,癌に対する診断や治療が1つの大きな目標となってきたことは研究の歴史が示している.超音波についても同様のことがみられ,超音波の生物学的作用(Wood & Loomis 1927)や癌に対する超音波の作用(中原1934)など一連の研究が,強力超音波応用の端緒といわれるほどその歴史は古い.癌の治療に対する強力超音波の利用の研究はその後も続けられ,とくに最近では癌のhyperthermia治療における局所加温の手段として超音波が注目されるようになった機会に,これまでの一連の超音波と癌に関する研究の成果が,再び見直されつつある.
一方,最近急速に普及してきた超音波診断法についても,各種の広い臨床応用の中で,癌の診断が大きな課題となっている.これは超音波診断法研究の歴史をみても,Dussik K(hyperphonography,1949),Bolt RH(1950),Wild JJ(two dimensional echography,1955),菊池,和賀井(ultrasono-tomography,1952),Howry D(somascope,1955)などにより生体軟部組織の超音波による映像化が研究された当初より,脳腫瘍や乳癌などの組織異常の検出が目標とされたことは,超音波による組織の映像化の特徴から考えれば当然といえるかもしれない.
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