天地人
二足の草鞋
浪
pp.2371
発行日 1980年12月10日
Published Date 1980/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216977
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"二足の草鞋を穿く"というたとえがある.広辞林をひいてみると,"同じ人が相反するような二種の職業を同時にもつこと"とあり,その例として,"ばくちうちが召しとりの役人になるような場合"をあげてある.時代劇にはよくこんな人間が登場し,強きにへつらい弱きをいびり,あげくのはてにバッサリやられるというのがおきまりで,あまりいい意味には使われていなかったようである.
すさまじいばかりのマスコミ繁栄の恩恵に浴して,二足の草鞋を穿く人間があふれる当節である.多くの場合,持前の器用さやパーソナリティーがみとめられて,ほんの余技や副業程度のことをこなしているうちに,本業のほうがむしろ後退してしまう人達が目立つ.マスメディアとしてせいぜい新聞とラジオ位しかなかった頃には,その道によほどの才能がない限り,本業以外の分野で名をなすことは至難のことであった、また,そうした人達は,二足とも立派に穿きこなしていた.
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